映画怪物ネタバレ考察&解説!作文と最後の会話の意味は?と題してお送りします。
「万引き家族」でパルムドールを受賞した是枝裕和監督と「花束みたいな恋をした」の脚本家坂元裕二がタッグを組んだと上映開始前から話題になっていた映画「怪物」が6月2日よりいよいよ劇場公開されました。
さっそく劇場へと足を運んだ人たちの間では「あの作文やラストはどういうこと?」と話題になっているようです。
今回は映画怪物のラストに焦点を当てて徹底解釈してみたいと思います。
映画怪物をネタバレ考察&解説!作文と最後の会話の意味は?を最後までお楽しみください。
映画怪物をネタバレ考察!
【怪物】見た。
覚悟はしていたものの、やはり相当キツい映画だった。
坂本裕二脚本にブンブン振り回される126分。
3幕もの。2幕目までゴリゴリのホラー映画かと思った。人間、めちゃコワ。
何と言っても田中裕子だ。凄まじい演技。
全ての業を背負ったかのような佇まい、表情、その視線。完全に別格。 pic.twitter.com/7AKMP4djYj— rtm007 (@rtm007) June 2, 2023
予告映像では「生徒同士の喧嘩あり?」「先生が生徒に暴力?」「モンペ母親登場?」という先入観を与える内容になっていました。
暴力を否定する教師、なんだか様子のおかしいクラスメイトたち、必死ゆえに熱くなりすぎている母親の様子があいまって「誰かが嘘をついてる…?」という疑念を観ている側に抱かせます。
何度もCMで流れた「怪物だーれだ?」の正体も気になるところ….
これはもう劇場に行って直接確認するしかない!ということでさっそく行ってきました。
映画怪物のあらすじ
#怪物
これは巧みだ。
匠、坂元脚本が冴え渡る。
終始ストレスを感じながら進む話だったのに、鑑賞後の余韻が凄すぎる。サッパリなのか、こってりなのか?…答えはまだ出ないが、是枝監督とのタッグだったからの妙味か。カンヌ脚本賞は納得の受賞も、もう1つのクィア・パルム賞に驚き感激した★★★★ pic.twitter.com/TgnGtCxs9u— babooi (@babooimovie) June 2, 2023
どこにでもいそうな母子家庭の親子から物語は始まります。
クリーニング屋で働くシングルマザー沙織(安藤サクラ)と息子の湊(黒川想矢)。
父親は亡くなっていますが母の沙織は夫の誕生日に仏前にケーキを供え、息子の湊にもお父さんへの近況報告を促すなど、今でも愛のある様子が伝わってきます。
息子の湊へもしっかり愛情をもって接している沙織ですが、湊のスニーカーが片方なくなったり、風呂場で無造作に髪を切る湊の姿に動揺したり、水筒に泥が入っていたりとなんだか気になることが続くうち、湊から「担任から暴力や暴言を受けている」と打ち明けられ学校へ乗り込むことになります。
しかし学校側の対応は校長をはじめ担任も学年主任もみんな揃って目が死んでおり、示し合わせたような中身のない返事と形ばかりの謝罪ばかりでまるで話になりません。
せまい校長室の応接セットで大人たちが「こうすればいいんでしょう」とばかりに頭をさげたまま動かない姿はあまりにシュールすぎて笑ってしまいました。
何度目かの来校で担任から今度は逆に「湊くんは星川君という子をいじめてるんですよ!」と逆襲のような批難を浴びた沙織は真実を探るべく、湊の同級生星川依里の自宅を一人訪ねます。
家には星川くん(柊木陽太)しかいないのですが、気軽に沙織を家にあげ、人懐っこい姿を見せます。
仕草も顔も話し方もなんかもう、可愛い100%で構成されているような奇跡の男の子の登場に一瞬で引き込まれてしまいました。
星川くんの首や腕にやけどのような跡が見えるのが気になる沙織…..
ここからネタバレ
『怪物』の本質的要素は「人間が生きる上で、他者に対する無自覚な加害は不可避であること」(見えてない世界があること)にあると考えています。
その意味で是枝監督の「LGBTQの映画ではない」と発言は、言葉足らずだったとは思うけど、この映画と矛盾しない整合した発言であったと思う。 pic.twitter.com/06eZWPgKnA— suzu (@nezimaki49081) June 2, 2023
主演の湊と星川くんがなんだかあまりに瑞々しい組み合わせでその気配がない段階からなんだか「あれ…?この感覚はなんなんだ….?」となってしまったことを白状しておきます。
星川くんはおそらく自覚のあるLGBTでそのことを「お前の脳みそは豚の脳みそだ、お前は病気だ」と否定する父親から虐待を日常的に受けているうえ、とにかく可愛らしいせいかクラスの男子たちからもいじめを受けています。
2人のときには遊ぶ湊ですが「みんなの前では話しかけないで」などと星川くんに言い放ち、クラスの男子に促されればいやがらせに自身も加わったりします。
ラガーマンだった父親を持ちながら息子はこんな感じなのか……と正直思ってしまいましたが、物語が進むにつれ、湊の父親は実は不倫旅行中に事故にあい亡くなっていることがわかります。
母親の沙織が「湊がふつうに結婚して子供を持つまでは頑張るってお父さんに約束してる」と運転しながら助手席の湊へ言うシーンも父親の不倫を知らずに聞くのと、知った後での印象はかなり違ってきます。
「僕はお父さんにはならない」と返した湊の声は騒音にかき消され沙織の耳には届きませんでした。
この「僕はお父さんにはならない」の言葉には2つの意味が込められていると感じました。
1つ目は沙織の望んだ「ノーマル前提の幸せな家庭」を持つ大人にはならない。
そして2つ目は「家族を裏切ったまま死んだ薄汚い父親」のような人間にはならない。
「ノーマル」「父親」そのどちらも否定したとき、湊は手元のスマホの着信に気付きます。
発信者は「より」(星川くん)
その瞬間、衝動のように湊は走行中の車内から飛び降りて沙織に衝撃を与えます。
2人だけの秘密基地
湊を廃トンネル奥にある廃電車へと案内する星川くん。
だんだんと打ち解けていくにつれ、お互いの父親についても明け透けに話すようになっていきます。
「宇宙は膨張し続けていて最後には爆発するんだ。そうしたら時間は逆さに流れるようなって
牛丼は牛になる。うんこはお尻に入る」と湊に話して聞かせる星川くん。さすがの小学生。
きたる宇宙爆発の日に備え、電車のなかに装飾を施す2人。楽しそう。
しかしそんな日々も終わりの予感が訪れます。
「転校するみたい。おばあちゃんの家で暮らすんだ」という星川くんに湊は「おとうさんに捨てられるんだ」と寂しさ紛れでいじわるなことを言いますが、笑って否定しない星川くんに「ふざけただけだよ」と怒ったように迫る湊。
妙な興奮と距離感に(あれ……これもしかしてキスしちゃう……?)とこっちが焦ります。
「みなと….」と星川くんが湊に抱き着くと、突然慌てたように声を荒げる湊。
「僕もときどきなるから大丈夫」と呟いた星川くんを突き飛ばして走り出す湊。
主語こそない会話ですがその瞬間「お父さんにはならない」も「テレビに映ったニューハーフ」も
すべてのキーワードが成立します。
湊と沙織の関係性
湊が沙織に父さんの伝言として「いつもありがとう、大好きだよ」と伝える場面。
家族を裏切った最低な父親という真実は完全になかったものとし、あくまでも普通の大好きなお父さんとして振舞う沙織に対して、湊は最後まで本音で話し合うということができませんでした。
「いつもありがとう、大好きだよ」
これは沙織が湊に強いている父親像に最後まで付き合った湊からの優しい嘘なのだと感じました。
もう少し本音をぶつけ合うことができていたなら、あるいは「カミングアウト」という形をもてたのかもしれません。
星川くんとの会話でも「親だから気を遣うじゃん」というセリフが出てきましたね。
不可解な結末を徹底解釈!
怪物
今年の邦画で1番の衝撃作にして傑作。
ひとつの事件を複数の視点から描くことで、誰しもが持つ人間の本性と切ない真実が明らかになっていく。
是枝監督による自然の映像美も良く、本音を隠しぶつけ合う俳優陣の演技が凄い。
己の保身のために目の前のことから目を背け、大切な存在のために↓ pic.twitter.com/ISxjwD8NIN— 倉光勇人(くらみゆうと) (@7cWPEQn7hNOA6Np) June 2, 2023
沙織へすら最後まで打ち明けられなかった秘密を抱えたまま、湊は台風のなか、星川くんの家へ向かいます。
上がり込んだ家のお風呂場で折檻されたまま浴室で半ば気を失っている星川くんを見つけた湊。
2人は豪雨のなか自転車を走らせ廃電車へ向かいます。
電車へ辿り着いた2人の耳へやがて土砂崩れであろう不気味な轟音が響いてきます。
「発車するのかな?」と運転席側へ移動する2人。
時系列としてはこのあと土砂崩れに飲み込まれて電車が横転→保利先生と沙織が駆けつけたときには2人はもう…ということだと思われます。
作文と最後の会話の意味は?
怪物
今年の邦画で1番の衝撃作にして傑作。
ひとつの事件を複数の視点から描くことで、誰しもが持つ人間の本性と切ない真実が明らかになっていく。
是枝監督による自然の映像美も良く、本音を隠しぶつけ合う俳優陣の演技が凄い。
己の保身のために目の前のことから目を背け、大切な存在のために↓ pic.twitter.com/ISxjwD8NIN— 倉光勇人(くらみゆうと) (@7cWPEQn7hNOA6Np) June 2, 2023
作文はなんだったのか?
学校の授業で「将来」について書いた作文。
「先生気づくかな?」「気づかないでしょ」
湊が作文の1文字目に横文字で書いた「むぎのみなとほしかわより」の文字。
一緒にいたい未来、気づいてもらいたい気持ちを込めて書いた2人の名前。
保利先生はずっとあとになってこの文字に気づきます。
気づいてすぐ、あわてて湊の家へ向かい、湊の家の外から「先生が間違ってた」と声をはりあげますが湊はもう星川くんを迎えに家を出てしまったあとでした。
最後の会話の意味は?
台風一過のあと、晴れ渡った青空の下へ這いあがった湊と星川くん。
「生まれ変わったのかな?」「そういうんじゃないと思うよ」
泥まみれの姿ですがとても嬉しそうに草のなかを廃線路へと2人は駆け出します。
「(僕たち死んだけど)生まれ変わったのかな?」
「(このままでいるんだから)そういうんじゃないと思うよ」
と解釈できます。
どこにも行けない廃電車に乗りこみ、土砂で横転という最期。
物語の最中、何度も生まれ変わりというキーワードが出てきますが結局2人は生まれ変わらないという選択をしたのです。
生まれながらのマイノリティを捨ててまで、父親みたいな人間の後を追ってまで、新しい何かに生まれ変わることが一体何になるの?
それなら好きな子と今のままの自分で、2人だけでいたいと思う。
そんな純粋な考えが伝わってきて切なくなる最後でした。
まとめ
#カンヌ国際映画祭 脚本賞を受賞した#坂元裕二 さんからコメントが到着しました✨
「夢かと思いました。この脚本は、たった一人の孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です」#Cannes2023 #怪物 pic.twitter.com/hRZ55d6ADN
— 映画『怪物』6月2日(金)公開 (@KaibutsuMovie) May 27, 2023
個人的には万引き家族を上回る名作と言って過言ではないかと感じました。
今回は映画怪物をネタバレ考察&解説!不可解な結末を徹底解釈!最後の会話の意味は?と題してお送りしました。
すべての登場人物が少しずつ何かを見落としていたり想像力が足らず、傷つけあっていく姿もとてもリアルだと感じました。
てっきり怪物は誰なのかはっきりさせる映画かと思っていましたが、みんなが怪物だったという結末でした。
子役の黒川くんと柊木くんの演技にはとにかく引き込まれます。
それを固める周囲の役者陣もすごい。
全員がバラバラなことを考え、バラバラな行動をしているのにこの物語のカラーに全員きっちり染まっているのを感じます。
大人では辿りつけない場所へ2人の子供だけが駆け上がって行ってしまったんだなぁとぼんやりと寂しくなりつつ、どうあがいても自分は残された大人たち目線に近い存在である事実に呆然とするなか、坂本龍一さんの美しい旋律に包み込まれるエンドロールとなりました。
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映画を1階見に行けばチケット代に、ポップコーンなどで優に超えてしまう値段ですね!
今後、怪物もU-NEXTで見られるかもしれませんね^^
過去の作品はこちらの記事へ
映画怪物をネタバレ考察&解説!不可解な結末を徹底解釈!最後の会話の意味は?を最後までお読みくださりありがとうございました。
コメント
はじめまして、二人の秘密基地になっているのは廃バスではなく廃電車です。廃線に残された廃電車です。劇中のトンネル、鉄橋共に使われなくなった線路の跡です。
コメントありがとうございます!
すみません、バスだと思っていました!
記事は訂正いたします。
わざわざ教えていただき本当にありがとうございました^^